ジョジョの奇妙な世界遺産
ゆう
2019年04月10日

長期に渡り連載が続く大人気漫画、「ジョジョの奇妙な冒険」ーー連載開始時には主人公がイギリス人という設定が衝撃でしたが、それから主人公がどんどんと代替わりをしていきヨーロッパやアメリカ、中東など世界各国を舞台とした一大冒険譚として今なお多くの人々を惹き付けて止みません。
ここではそんなジョジョの奇妙な冒険に登場する世界遺産をまとめてみました。
  • テオティワカンの古代都市

    『血は生命なり!』
    ジョジョの奇妙な冒険の第1巻、プロローグはこのセリフで幕を開けます。
    かつてメキシコに栄えたアステカ文明で「石仮面(ジョジョを語る上で外せないキーアイテム)」が使われていたという設定です。劇中ではテオティワカンとは明示されていないのでチチェン・イッツァに聖地巡礼してしまう方もいるかもしれませんがあちらはユカタン半島、「メキシコ中央高原」「アステカ文明」といったキーワードからこちらであることは間違いないでしょう。
    ※正確にはテオティワカンを作ったのは「テオティワカン文明」であるとされています。しかし、ここを発見しテオティワカンと名付けたのはアステカ人であり、実際ここが建設当時なんと呼ばれていたのかを知ることは出来ません。浪漫だなあ。
  • リヴァプール海商都市

    メキシコの不穏なプロローグを経て、ジョナサン・ジョースター(ジョジョ)とディオ・ブランドーが登場する第一部は始まりました。舞台はイギリスです。
    では、ジョジョとディオが青春を共に過ごしたジョースター邸はどこにあるのでしょうか。答えは第一話に既にありました。
    ディオの父、ダリオ・ブランドーが手に持っている手紙にはちゃんと住所が書いてありました。「Riverpool」と。はて、リバプールはLiverpoolではないのかという疑問も浮かぶのですがそこは敢えてなのか間違いなのかわかりません。いずれにしても近郊に港があるという設定からもリバプールだと思って間違いないのではないでしょうか。
    余談ですがジョジョにはビートルズネタがいたるところに出てきます。このことからもビートルズの生まれた街であるリバプールと考えるのは自然でしょう。
  • ヴェネツィアとその潟

    第二部の舞台といえば「ニューヨークのジョジョ 」であるジョセフを主人公にNYで幕を開けますが、そのニューヨークにある世界遺産自由の女神は姿こそ劇中に描かれるものの特にリバティ島が重要な舞台になったわけでもないのでここでは割愛します。二部は実はアメリカ、メキシコ、スイス、イタリアといった具合に色々な国が登場するのです。ドイツ軍人も大活躍。
    で、ヴェネチアです。ここでジョセフはリサリサ先生と衝撃的な出会いを果たします。ゴンドラの水夫かと思ったら実はそいつが先生。しかも女(後で判明するけど実は50歳。さらに実は肉親)。どれだけサプライズのカードを持っているのでしょうリサリサは。
    ともあれ、マスクを被った水夫のくだり、波紋を使って水の上に立ったりするくだりもヴェネチアならではでしょう。

    そして時は流れ、五部でもヴェネチアは重要な場所となります。ブチャラティチームがボスの娘を連れてこいと指定される場所もヴェネチア、サン・ジョルジョ・マッジョーレ島なのです。
    「吐き気を催す邪悪とはッ!」「きさまにオレの心は永遠にわかるまいッ!」「あんたは今再びオレの心を裏切ったッ!」等々、ブチャラティの名言が数多く生まれた場所です。本当にどうでもいい話ですが、私の一番好きなキャラクターでもあります。
  • エオーリエ諸島

    さて、二部のクライマックス、ラスボスであるカーズとの戦いです。
    カーズはとにかく強い。一部のボスであったディオ(吸血鬼)を食料扱いしてしまう柱の男の長。そして太陽さえも克服した究極生命体。どうやってこんなやつに勝てばいいのかと全読者を心配させたあまりにも強すぎるボスです。
    勿論ジョジョ が勝てるわけはありません。あっさり左手を切断されて絶体絶命。
    カーズVSジョジョだと明らかに負けてたのですが、なんとカーズよりも強い存在がいました。何だと思いますか?そう、世界遺産です。
    究極生命体カーズはエオリア諸島を構成する「ヴォルガノ島」の噴火によって大気圏外に吹っ飛ばされました。とはいえ究極生命体は宇宙空間でも死ねないので終いには考えるのをやめたそうです。
    世界遺産、強い。
  • アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群

    ジョジョの第三部は承太郎一向が宿敵ディオを倒すためにエジプトへと向かうある種の旅物語です。この漫画を通してアジアや中東の様々な街や風習を知ったという人も結構居たのではないでしょうか。
    この世界遺産が登場するのは「クヌム神のオインゴとトト神のボインゴ」の導入部です。アブシンベル神殿の傍で座り込み漫画を読んでいたボインゴに観光客が話しかけます。このシーン、実は都市伝説的文脈でも語られてるんですよね。ボインゴが読んでるのは「未来予知」のスタンド能力で描かれた漫画なんですけど、アメリカ同時多発テロを予知してたって騒がれました。眉唾ですので詳しくは書きませんが、こういう偶然ってあるんですね。
    このアブシンベル神殿、アスワン・ハイダム建設工事の影響で世界遺産条約が作られるきっかけになった記念碑的遺産ですよね。ジョジョの本編からここがどう書かれているか抜粋してみましょうーー「北回帰線が通過するところーーこのナイル川流域を「ヌビア地方」と呼ぶ。かつて古代エジプト人はこの地の花崗岩の石材から数々の神殿や彫像や記念碑を作っていたーーそして現在、エジプト人はこの地に貯水量世界第2位のアスワン・ハイダムを1971年に完成させているのである」…どうでしょう、ちゃんとアスワン・ハイダムにも言及されてます。下手に学校の勉強するよりジョジョ読んでる方がいいかもしれませんね。
  • カイロ歴史地区

    長い旅の末に辿り着いた第三部最終決戦の地、カイロ。乞食の振りをした情報屋が居たり、ロードローラーが有ったり、渋滞だからといって歩道を車で爆走したりしていいのかどうかはわかりませんが、ジョジョ好きにとっては「ついに来た」と思わせる場所であることは間違いないです。
    ディオの館、有るのかはわかりませんがモデルとなった場所にでも行ってみたいものです。地獄の門番に気をつけないと。
    ところでなぜカイロの最終戦で何の前触れもなく承太郎とディオが空を飛んでいたのかは現在でも私の中で謎です。
  • ナポリ歴史地区

    五部はイタリアが舞台です。
    「ぼくはあんたのボスを倒してこの街を乗っとるつもりでいる」と主人公ジョルノ・ジョバーナはブチャラティに言いましたが、この街とはそう、ナポリです。作中では頑なにネアポリスと呼ばれています。
    序盤で卵城もしっかり描写されていますし、斜面のケーブルカーでの戦いもナポリぽさを盛り上げます。
    ナポリは治安が悪いということが旅の初心者から聞かれることもありますがそういう話を聞くにつけ、そりゃあパッショーネが牛耳ってる街なんだから当然じゃあないか、と(作品と現実を混同し)思うのですが実際はそこまで悪くないみたいです。ただ私にタクシー運転手や警備員や警官とかでさえも素直に信用できなくさせたのはある意味ジョジョ五部のせいだとも言えます。
  • ポンペイ、エルコラーノ、トッレ・アヌンツィアータの考古地域

    ヴェスビオ火山の大噴火によって埋もれた町、ポンペイ。五部の主人公一行の住むナポリとはほど近いです。
    1800年間も土や火山灰の中で眠っていた当時の面影を残す遺跡。第五部では正にその遺跡でバトルが展開されます。
    凶暴で使いにくそうなパープルヘイズというスタンドがお披露目されたり、「半分だけ許可する」という都合の良い承諾の仕方もあるんだと読者に教えてくれた場所でもあります。
    犬の床絵が作中で重要な装置として登場しますが、それを実際に見たい場合は「悲劇詩人の家」と呼ばれる場所に行くといいでしょう。ただしアバッキオのように立入禁止の場所にずかずかと土足で入るのはいけません。どれだけ探してもそこに鍵はありませんのであしからず。
  • ローマ歴史地区、教皇領とサン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂

    五部最終決戦の地がローマです。
    コロッセオの階段でコツーンコツーンと足音を響かせながら服を脱ぎたいジョジョファンは多いことでしょう。
    組織のボス・ディアボロとジョルノが決着をつけたのはティベレ川にかかるサンタンジェロ橋です。奥にサンタンジェロ城が描写されているので間違いないでしょう。さて、その橋と城ですが(世界遺産マニアらしく)プロパティの範囲を地図で細かくチェックしてみたところエリアに含まれていませんでした。が、奇跡が起きます。なんと2015年の軽微な変更によってサンタンジェロ城と橋も世界遺産の範囲内に組み込まれていたのです。見つけた瞬間ディモールト(非常に)嬉しかったです。

    余談ですが二部でジョセフがシーザーと出会ったのもここローマでした。そしてカーズ・エシディシ・ワムウが眠っていた地下遺跡も。その遺跡の入り口は「真実の口」ですが実際にはあれは扉ではありません。間違っても押したり回そうとしたりしないでください。
  • 独立記念館

    ジョジョ七部「スティール・ボール・ラン」はアメリカ横断レースが描かれています。
    アメリカにも沢山の世界遺産がありますが独立宣言庁舎は特に作中で重要な場所として登場しました。フィラデルフィアは昔首都だったこともある場所ですし、なんたってボスは合衆国大統領ですからね。
    西海岸からスタートして東海岸のニューヨークがゴールということでこのフィラデルフィアはいよいよもうゴールも差し迫った時期、そして物語もクライマックス、そりゃあ大統領も急にイケメンになりますよ。
    世界遺産の中までばっちり描写されています。ディオが警備兵のコスプレまでして庁舎内に潜入したのに意外とすぐにバレるシークエンスとかですね。
  • パリのセーヌ河岸

    あれ、ジョジョってフランスを舞台にしていたっけ?という声も聞こえてきそうですが、四部の主要キャラの一人岸辺露伴を主人公としたスピンオフ「岸辺露伴ルーヴルへ行く」はそのものずばりルーヴル美術館を舞台としています。ルーヴルはパリのセーヌ河岸の一部ですね。
    というか、この作品自体がルーヴル美術館に展示されたんです。パリの世界遺産に日本の漫画が展示されるってもう意味がわかりません。ここに来てようやくジョジョと世界遺産の親和性がお分かり頂けたでしょうか。
    さて、ルーヴルで一番有名な絵と言えばモナリザですね。四部のラスボス、吉良吉影は子供の頃モナリザを見て性が目覚めたそうです。なんとも異常なエピソードでした。
  • 平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群-

    平泉の世界遺産登録を記念して、いわて平泉世界遺産情報局の公式ページにジョジョの作者である荒木飛呂彦氏が書き下ろしイラストを提供しました。
    奥州藤原氏の清衡・基衡・秀衡や中尊寺が描かれており、公開当時奥州藤原氏がジョジョ立ちしていると話題になりました。話題になったせいで岩手県のホームページごとアクセス過多でダウンするという珍事まで起こったとか。
    ジョジョの奇妙な世界遺産ーータイトルを今再び見直した貴方、平泉は別にジョジョに登場してないじゃあないかと思ったでしょう。しかしかつて荒木氏は「もう何を書いてもジョジョになる(意訳)」と仰っていました。つまりもうこの平泉三代もジョジョなのです。強引でしょうか?
  • 紀伊山地の霊場と参詣道

    またジョジョ作中とは一切関係無くなってしまうのですが、紀伊山地の霊場に含まれる世界遺産のひとつ熊野本宮大社のお守りを荒木氏がデザインしました。
    世界遺産的側面から見るとなんとこのお守り、サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路(スペイン)との繋がりを表現した物なのです。
    表のデザインが紀伊山地の霊場を表す八咫烏、裏のデザインがサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路を表す貝殻をモチーフとしています。
    八咫烏はなんだかもう三部に出てきたホルス神を彷彿させます。かわいいです。ジョジョ好きなら、もしくは世界遺産好きなら、熊野本宮大社に行った際には是非ともゲットしましょう。

    いかがでしたでしょうか。
    世界遺産とジョジョってはっきりいって親和性が高すぎませんか?(二回目)
    共通点を考えてみましたが、ひとつは「芸術性」、もうひとつは「世界が舞台」、そしてやはり『黄金の精神』でしょうか。
    現在は日本(仙台モチーフ)を舞台とした八部が連載中なので次なる世界遺産が登場するのは難しいかもしれませんが、九部では思わぬ国が舞台になって登場しまくるかもしれません。若しくは荒木氏が世界遺産と新たなコラボをする可能性もあり得るのではないでしょうか。
    世界遺産・ジョジョ両方のファンとして期待せずにはいられません。

    To Be Continued