国立公園/絶滅危惧種/先史時代 ブルネイ・ダルサラーム の世界遺産
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黄金と緑の王国、ブルネイ。
豊かな小国が守り抜いた「手つかずの森」と世界遺産ゼロの理由
ボルネオ島の北部に位置する、三重県ほどの大きさの小さな国、ブルネイ・ダルサラーム。
「永遠に平和な国」という意味を持つこの国は、豊富な石油と天然ガス資源による経済的な豊かさと、敬虔なイスラム教の伝統で知られている。金のドームが輝くモスクや豪華絢爛な宮殿がイメージされる一方で、実は国土の70%以上が熱帯雨林に覆われている「森の国」でもある。しかし、2026年1月現在、これほど豊かな環境を持ちながらユネスコの世界遺産はひとつも登録されていない。
1. ブルネイとはどのような場所か?
マレーシアのサラワク州に囲まれた飛び地を含む2つのエリアから成る。
東南アジア屈指の裕福な国であり、医療費や教育費が無料であることや、所得税がないことでも有名だ。生活の基盤が安定しているためか、国全体に穏やかな時間が流れている。観光客誘致に必死になる必要がなかったため、手つかずの自然や文化がそのままの形で残されているのが大きな特徴だ。
2. なぜ世界遺産が「ゼロ」なのか?
ブルネイに世界遺産がない理由は、文化や自然の価値が低いからではない。主な要因は、世界遺産条約への批准が2011年と比較的遅かったことにあるようだ。
また、豊富な資源収入があるため、世界遺産登録による観光客の増加(経済効果)をそこまで急務としていないという、この国ならではの「余裕」も背景にあるのかもしれない。
3. 世界遺産級のポテンシャルを持つ場所
登録件数はゼロだが、世界遺産に匹敵する価値を持つ場所は確実に存在する。現在、ユネスコの暫定リストには以下の候補地が記載されているか、あるいは有力候補として名前が挙がっている。
タセク・メリムブン遺産公園(Tasek Merimbun Heritage Park)
現在、ブルネイがユネスコの暫定リストに正式に記載している唯一の候補地だ。
- 概要:S字型をした国内最大の淡水湖を中心とした自然公園。
- 価値:ASEANヘリテージパークにも指定されており、珍しい植物や鳥類が生息する生物多様性のホットスポットであると同時に、数世紀にわたるドゥスン族の生活の場としての文化的側面も併せ持っている。
ウル・テンブロン国立公園(Ulu Temburong National Park)
「ボルネオの緑の宝石」とも呼ばれる、手つかずの熱帯雨林だ。
- パラドックスな保全:隣のマレーシアやインドネシアが木材輸出のために森林伐採を進めた時代も、ブルネイは石油資源があったため、森を切り崩して現金化する必要がなかった。結果として、ボルネオ島で最も保存状態の良い原生林が残ることになった。
- 体験:ジャングルの樹冠と同じ高さを歩く「キャノピーウォーク」からは、果てしなく続く緑の絨毯を一望できる。
カンポン・アイール(Kampong Ayer)
首都バンダル・スリ・ブガワンの川沿いに広がる、世界最大級の水上集落。
- 東洋のベニス:16世紀にマゼラン艦隊の記録係が「東洋のベニス」と称賛した歴史ある場所。
- 生活文化:単なるスラムや観光用のセットではなく、学校、モスク、消防署まで完備された、約3万人が実際に暮らす「水上の都市」として機能し続けている。その歴史的景観と生活文化の継続性は極めて価値が高い。
4. これからのブルネイと遺産
近年、ブルネイ政府は石油依存からの脱却を目指し、エコツーリズムへの関心を高めつつある。
世界遺産がないということは、裏を返せば「オーバーツーリズムとは無縁」ということでもある。商業化されていない純粋な熱帯雨林や、ありのままの水上生活の風景。それらに触れることができる今は、ある意味で最も贅沢なタイミングなのかもしれない。
※本記事の情報は2026年1月時点のものである。現地の最新情報については政府観光局や公式サイト等で確認されたい。
