火山/旧市街・歴史地区/交易路・巡礼路 ブータン の世界遺産

選択した項目:   火山/旧市街・歴史地区/交易路・巡礼路, ブータン

ヒマラヤの幸福の国、ブータン。
なぜ世界遺産が「ゼロ」なのか?その背景と独自の哲学

ヒマラヤ山脈の東端に抱かれた、雷龍の国ブータン王国。
「国民総幸福量(GNH)」を掲げ、伝統衣装ゴやキラを纏った人々が暮らすこの国は、桃源郷のようなイメージで語られることが多い。しかし、これほど豊かな文化と自然を持ちながら、2026年1月現在、ブータンにはユネスコの世界遺産がひとつも存在しない。それは一体なぜなのか。その背景には、この国ならではの事情と哲学があるようだ。

1. ブータンとはどのような場所か?

九州とほぼ同じ大きさの国土に、約80万人が暮らす小さな仏教王国である。
長らく鎖国政策をとっていたため、チベット仏教の影響を色濃く受けた伝統文化が、手つかずの状態で残されている。経済成長(GDP)よりも精神的な豊かさ(GNH)を重視する国策は世界的に有名で、観光においても「ハイバリュー・ローボリューム(高品質・少量)」という独自の方針を貫き、環境や文化への負荷をコントロールしている。

2. ブータンに「世界遺産」はあるのか?

驚くべきことに、ブータン国内にユネスコの世界遺産(文化遺産・自然遺産)として登録されている場所はない。

近隣のネパール(カトマンズ盆地など)やインド(ヒマラヤ鉄道など)には多数の世界遺産があるにもかかわらず、ブータンが「ゼロ」であることは、多くの旅行者にとって意外な事実かもしれない。しかし、それは文化や自然の価値が不足しているからではない。むしろ、国全体が「生きた博物館」と言えるほど質が高いことは、訪れた誰もが認めるところだ。

3. 今後の登録候補と、慎重な姿勢

世界遺産がないのは、単に条約の批准が遅かった(2001年)ことや、登録プロセスに慎重であることが理由のようだ。現在、ユネスコの「暫定リスト」には、将来の世界遺産候補として以下の物件が挙げられている。

文化遺産の候補:ゾン(城塞)のネットワーク

ブータンの景観を象徴するのが「ゾン(Dzong)」と呼ばれる巨大な城塞建築だ。

  • プナカ・ゾン:「至福の王宮」とも呼ばれる、ブータンで最も美しいとされるゾン。かつての冬の首都であり、現在も宗教界の最高権威が冬を過ごす重要な場所だ。
  • パロ・ゾン:映画『リトル・ブッダ』のロケ地としても知られ、伝統的な建築様式を今に伝えている。

これらは単なる遺跡ではなく、現在も行政機関や僧院として機能している「生きている遺産」である点が大きな特徴だ。

自然遺産の候補:国立公園と野生生物保護区

国土の70%以上を森林が覆うブータンは、生物多様性の宝庫でもある。

  • ロイヤル・マナス国立公園:インドとの国境にまたがり、トラ、ゾウ、サイなどの希少動物が生息する。
  • ブムデリン野生生物保護区:オグロヅルの越冬地として知られ、自然と人間が共生する文化的景観としても評価されている。

4. 結論:肩書きよりも大切なもの

ブータンが世界遺産登録を急がないのは、観光客の殺到による環境破壊や、文化の変質を懸念しているからだとも言われている。
「世界遺産」というラベルがなくても、ブータンの風景や人々の暮らしは十分に尊く、美しい。

登録を目指す動きはあるものの、ブータンはあくまで自分たちのペースを守り続けている。その慎重で誇り高い姿勢こそが、この国を「最後のシャングリラ」たらしめている理由なのかもしれない。

※本記事の情報は2026年1月時点のものである。世界遺産の登録状況は変化するため、最新情報はユネスコ公式サイト等で確認してほしい。

検索結果  0  件中   0〜0  件表示
並び順 : 
お探しの条件に該当する世界遺産情報は見つかりませんでした。