先史時代/水利・灌漑/河川・湖 南スーダン の世界遺産
選択した項目: 先史時代/水利・灌漑/河川・湖, 南スーダン
世界で一番新しい国、南スーダン。
手つかずの大自然と、登録への長く険しい道のり
2011年、スーダンから分離独立し「世界で一番新しい独立国」となった南スーダン共和国。
ニュースで耳にするのは内戦や政情不安の話ばかりかもしれない。しかし、その国境の内側には、サバンナを埋め尽くす野生動物の大移動や、世界最大級の湿原など、驚くべき光景が広がっている。建国からまだ日が浅く、観光客もほとんど訪れないこの国において、世界遺産への取り組みはどうなっているのだろうか。
1. 南スーダンとはどのような場所か?
アフリカ大陸の北東部に位置する内陸国である。
国土の中央を母なる大河・ナイル川(白ナイル)が貫き、その周囲には広大な湿地帯とサバンナが広がる。石油資源が豊富だが、長引く紛争の影響でインフラ整備は遅れており、多くの国民が伝統的な牧畜や農業で生計を立てている。
2. 世界遺産はまだ「ゼロ」
2026年1月現在、南スーダンにユネスコの世界遺産は存在しない。
これは、国の歴史が浅いことだけでなく、2016年にようやく世界遺産条約を批准したばかりという事情が関係している。国内の安定化が最優先課題であるため、文化財の保護や観光開発といった分野にまで手が回っていないのが実情だ。
3. 世界を驚かせる「潜在遺産」たち
現在登録されている遺産はないが、ユネスコの「暫定リスト」にはすでに3つの候補地が挙げられている。そのポテンシャルは、隣国のケニアやタンザニアの有名観光地に匹敵、あるいは凌駕するとさえ言われている。
サッド湿原(The Sudd wetland)
白ナイル川流域に広がる、世界最大級の熱帯湿原である。
- 規模:雨季には面積が13万平方キロメートル(日本の国土の約3分の1)にも達する。
- 生態系:400種以上の鳥類や、絶滅危惧種の哺乳類が生息する生物多様性の宝庫であり、渡り鳥の重要な中継地でもある。
- 文化:ヌエル族やディンカ族など、湿原環境に適応した人々が、数千年にわたり自然と共生した生活を営んでいる。
ボーマ・バジンギロの渡り(Boma-Badingilo Migratory Landscape)
「アフリカ最後の野生動物の大移動」が見られる場所として、近年注目を集めているエリアだ。
- 大移動:100万頭以上のシロミミコーブ(アンテロープの一種)やティアンが、ボーマ国立公園とバジンギロ国立公園の間を季節ごとに大移動する。
- 比較:セレンゲティ(タンザニア)のヌーの大移動に匹敵する規模だが、観光客がいないため、完全に野生のままの姿が残されている。
デム・ズベール(Deim Zubeir)の奴隷貿易跡
19世紀後半に築かれた、奴隷貿易の拠点跡。要塞化された集落跡が残っており、負の歴史を伝える記憶の遺産として、文化遺産候補に挙げられている。
4. 未知なるフロンティア
南スーダンの自然は、皮肉にも長年の紛争や開発の遅れによって、開発の手から守られてきた側面がある。
世界遺産への登録は、平和の定着と管理体制の構築が大前提となるため、まだ少し先の話になるだろう。しかし、ここには地球上の他の場所では失われてしまった「太古のアフリカ」の姿が、今も鮮烈に残されている。
※本記事の情報は2026年1月時点のものである。渡航情報や現地の治安情勢については、各国外務省の最新情報を必ず確認されたい。
